この記事は作業で人は元気になれるのかということを考えてみました。
これは二年以上前に書いたものになりますので少し、手を加えました。
要点:作業で人は元気になれると、自信を持っていうにはまだ少しかかりそう
作業療法協会が出しているMTDLPの売り文句「人は作業をすることで元気になれる」とのことですが…ほんとなのか笑。
作業科学や、日本の研究も合わせて少し紹介したいと思います。
これは作業科学という学問の中で、行われた研究で、「作業は老化速度を遅らせるか」という問題に対して取り組んでいます。
この研究を通して、作業にどんな効果があるかということがわかります。
作業科学とは?
そもそも作業療法には基礎学問がないといわれてきたようです。作業療法よりも前に、作業について良く考えるための学問が作業科学です。メタ理論、なんていう言われ方をしています。大理論はMOHOやCMOPがありますがさらにそれより広い、理論です。それで、作られたのが作業科学という学問のようです。
作業科学の目的としては、「作業は健康や安寧や環境にどのように影響するか、どのように影響されるかについて研究する」「人間の健康と日常的な経験と作業との関係に関する知識を構築する」などが挙げられます。
中核となる概念は、以下のようです。
作業科学:作業的存在としての人間の研究する基礎学問であり、作業的存在としての人間についての厳密な研究。
作業:文化的個人的に意味のある活動のまとまりで、文化の中で命名される、すること(doing)、なること(being)、なっていくこと(becoming)
人を作業的存在ととらえ、作業をすること(たとえば仕事をすること)で、作業的存在(社会の一員、あるいは、一家の大黒柱など)になるという考えです。
研究対象としては以下のようなものがあげられます。
・人の作業を特徴づけるものは何か?
・人の作業の形態、機能、意味は何か?
・人の作業と健康との関係は?
・人の作業と人間発達との関係は?
作業科学は作業療法にどのように影響してくるかというと、
伝統的な作業療法における作業には治療的な力があるという根拠
作業的存在として、自己及びクライアントをとらえる
共同的で作業中心な治療関係の促進
これらの手助けになります。
Well Elderly Study(健やか高齢者研究)
先ほど書いたように、作業科学というものを通して、「作業は老化速度を遅らせるか」という問題に対して取り組んだのがこの研究になります。
健やか高齢者研究は対象者361人をランダムに振り分けて比較する、ランダム化比較試験で行われており、エビデンスがかなり高いといわれています。
健やか高齢者研究は361人の低所得の高齢者用公営アパートに住む高齢者を、OTが担当する作業療法群、専門職ではないスタッフが担当する社会的活動群、無介入群に振り分け、9か月でどのような変化が起こるかを調べました。
そして作業療法群と他の二つの群をADL、社会活動、対人交流、生活満足度、身体機能などの15項目で比べると、実に10項目に低下の程度に有意差がみられたのです。
ちなみに専門職ではないスタッフが担当する社会的活動群、無介入群では有意差がなかったとのことです。
ちなみに作業療法を行った群では、「ライフスタイル再構築(Lifestyle Redesign)」というプログラムを行っています。
このプログラムは
①講義:日常生活活動、対人関係など様々なテーマについて講義を受ける
②情報交換:小グループで経験を語る
③体験:講義や情報交換で出てきたことを実際に体験
④生活での発展:プログラムで行ったことは生活の中でさらに工夫したり、新たな展開がある
という流れで行われます。
このプログラムの原著はとても難しく、なんか ビデオみたいなのがあるみたいな噂も聞いたんですが、はて…笑。
しかし、このプログラムの中には作業療法のヒントになりそうなことがありそうな気がしているので調べていきたいと思っています。
日本では?
ちなみにこのライフスタイル再構築のプログラムの流れでMOHOの講義をするというのが「65歳大学」です。介護予防などに使おうと色々な取り組みがされているようです。すでにRCTなどで結果も出ているようなので要チェックかもしれません。
「人は作業をすることで元気になれる」がしっかりとした根拠を持って言えるようになるには少し時間がかかりそうです。
ではまた!